2011年 1月 の記事

学生に優しい教科書とは?:改訂作業の手伝いから感じること

今学期よりスタートした仕事の1つとして、リーダーシップ研究をされているロナルド・リッジオ教授の書かれた『Introduction to Industrial/Organizational Psychology(産業・組織心理学入門)』の改訂作業を手伝わせていただくことになった。仕事内容的には、各トピックにおける最新論文のアップデートや、例となる題材を探すことなどが主になっている。まだ作業そのものは始まったばかりであるが、将来、産業・組織心理学を教える際には、ぜひこの教科書を使っていきたいと感じた。その大きな理由が、リッジオ教授の学生に対するの思いから生まれたという、この教科書の原点にある。 続きを読む

授業への熱中も受ける側次第:フロー理論の応用編

冬休みもついに終わり、いよいよ本日より新学期スタート。早速午前中は統計学(回帰分析)の授業に、午後も統計学(因子分析)の授業に参加。どちらもデール・バーガー教授というおいしそうな名前の先生が教えている。その授業も名前に劣らずなかなかおいしい(ただ綴りはハンバーガーのバーガーではないので注意)。ミネソタで修士号に取り組んでいる間にも一通り学んだ教科ではあったが、バーガー先生はなかなか細かいところまで踏み込んでくれるので非常に勉強になる。先学期も彼の授業を取っていたが、昔習ったことがあるから、との理由で軽んじた態度をとっている学生がいたことを残念に思った。私は、そのような態度を取ってはいなかったものの、その当時は、「あぁ、また繰り返すのか」と少々の落胆を覚えていたのは確かだ。

そんな時、ポジティブ心理学授業でフロー体験に関する課題が出た。 続きを読む

心理学研究における『バランス』は取れたのか?:論文数調査

たいそうなタイトルをつけてしまったが、前回のエントリーでの予告通り、ポジティブな側面の研究とネガティブな側面の研究のギャップが、具体的にはいったいどんな状況なのかを調べたので、その結果を紹介したい。『Positive Psychology in Practice』に紹介されているLinley博士とJoseph博士の用いた方法に倣い、簡単ではあるが、心理学研究の経緯をトピックを絞って1961年からの累計出版論文数をまとめてみた(下図参照)。PsycINFOと呼ばれる心理学研究論文のサーチエンジンを使い、ネガティブな側面の研究の1つである「Depression(うつ)」というキーワード、そしてポジティブな側面の研究の1つである「Well-Being(幸福)」というキーワードをもとに、出版された論文の数を5年ごとのまとまりで集計。尚、論文はピア・レビューされたものに限った。 続きを読む

なぜポジティブ心理学なのか?

昨年受講した授業にFoundation for Positive Psychology(ポジティブ心理学の基礎)というものがあった。ポジティブ心理学は、人が本来持つポジティブな感情、強み、楽観思考などに焦点をあて、それらの科学的理解や開発方法に関する研究を指すものである。1998年、マーティン・セリグマン博士がアメリカ心理学会の会長に就任する際に、従来、心の病気の解明や治療法を中心に研究をしてきた心理学の新たな方向性として打ち出されたのが、このポジティブ心理学だ。その後、『American Psychologist』という雑誌の特別号として2000年にポジティブ心理学関連の論文が様々紹介された。 続きを読む

あなたにとっての仕事とは?:個人と仕事の3つの関係

私がもともと心理学に興味を持ち始めたのは大学時代。アメリカで社会心理学の博士号を取られた日本人教授の熱血授業に魅了された。そんな中、セリグマン博士の書かれた『世界でひとつだけの幸せ(原題:Authentic Happiness)』に出会いポジティブ心理学の存在を知る。ぐいぐいとその世界に引き込まれ、この学問を応用した何かをしたい、と漠然と考えてるようになっていた。様々な相談やアドバイスを受けた末、人が人生の約3分の1(個人差は別として)の時間を費やす仕事という場において心理学を通して貢献したいと決意し、今に至る。自己紹介じみた始まりになってしまったが、今回取り上げたいのは、個人と仕事の関係だ。

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個人ブログ開設の挨拶

長い間、開設を望んでいた個人ブログをいよいよスタートすることとなった。方針等詳細はまだ決めつつあるが、心理学を職場に応用する組織心理学を学ぶ者として、興味深い研究や、個人の考察、また海外研究者のアイディアなどを紹介していきたい。さらには、21世紀に入ってより注目の集まっている、ポジティブ心理学の研究なども(できるだけ組織への応用の角度から)併せて紹介していく予定でもある。また、英語で学んできた内容を、日本語でわかりやすく説明するための訓練とも捉えているので、読まれる方からのアドバイス等を真摯に受け止めていきたいと思っている。結びに、組織の要は「人」にあり、とよく言われるが、その人の「心の理(ことわり)」の理解を深めていくことは、個人の自己成長のため、また組織発展のためにも重要な課題であろう。その課題を紐解く材料を少しでも提供できるのならば、ブログ開設に関してこれ以上の喜びはない。