なぜポジティブ心理学なのか?

昨年受講した授業にFoundation for Positive Psychology(ポジティブ心理学の基礎)というものがあった。ポジティブ心理学は、人が本来持つポジティブな感情、強み、楽観思考などに焦点をあて、それらの科学的理解や開発方法に関する研究を指すものである。1998年、マーティン・セリグマン博士がアメリカ心理学会の会長に就任する際に、従来、心の病気の解明や治療法を中心に研究をしてきた心理学の新たな方向性として打ち出されたのが、このポジティブ心理学だ。その後、『American Psychologist』という雑誌の特別号として2000年にポジティブ心理学関連の論文が様々紹介された。

そもそも、ポジティブ心理学の持つような視点に気づいていたのはセリグマン博士が最初ではない。人間性心理学という分野をリードしたアブラハム・マズロー博士もその1人である。彼は、1954年に出された著書『人間性の心理学(原題:Motivation and Personality)』の中でこう述べている。

心理学という科学は、人のポジティブな側面よりも、ネガティブな側面の科学的な研究においてはるかに成功を収めてきた。それらの研究は、人間の欠点、病気ついて多くを明らかにした。しかし、人間の潜在能力、美徳、何かを成し遂げようとする熱意に関しては未だ多くが分かっていない。それはまるで、心理学が、その学問の持つ正当な権限の半分―それも暗く、卑しい半分―のみに自主的な制限をかけているようである。  p. 354

残念ながら、人間性心理学でうまくいかなかったのは、斬新なアイディアが先走り、確かなデータによる裏づけが欠落していたことにある。ポジティブ心理学者が強く訴えているのは、正しい研究デザインと統計データ分析に基づいた研究を発表することの重要性である。授業を教えてくださったチクセントミハイ教授とナカムラ教授も、この点を何度も強調していたのを思い出す。そうでなければ、人間性心理学の二の舞になりかねない、ということであろう。さて、このマズロー博士の言葉にもあるポジティブな側面の研究とネガティブな側面の研究のギャップ。具体的にはいったいどんな状況なのかを調べてみることにしたので、次回のエントリーで紹介したい。


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    • 2011年 1月 15日

    マズローって欲求(か幸福度)のピラミッドを提唱した人だっけ?

    • その通り。欲求の階層説だね。それに関しても面白い豆知識的なのがあるから、また紹介するよ。

  1. なるほど
    興味深いですね

    • 読んでくださりありがとうございます。

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