ワークパラドックス:労働者におけるフロー体験の研究から分かったこと

過去のエントリーでも紹介したが、フロー理論の中では、フローを体験するためには、個人のスキルレベルに合ったチャレンジレベルが必要となる。それでは、仕事の場面において、フロー体験に必要なスキルレベル・チャレンジレベルがそろっていれば、必ずフロー体験そのものにつながるのだろうか?ひょっとするとそうではないのかも知れない、というのが今回の話である。

1989年、『Journal of Personality and Social Psychology』の中で紹介されたCsikzentmihalyi博士、LeFevre博士両者の研究は、78人の労働者を対象にExperience Sampling Method (ESM:経験サンリング法)という方法を使って1週間参加者を追い、彼らの仕事中やレジャー中の心理的経験(フロー、不安、退屈など)について調べたものだ。(ESMについてはまた時を改めて紹介させていただくことにする。)この研究における発見の1つとして、レジャーを楽しんでいる時よりも、仕事をしている時の方が多くフローを体験していた、という点がある。ところが、ポジティブ感情、高い集中力が高く、フローを体験できる高チャレンジレベル、高スキルレベルの状況にいたにも関わらず、マネージャーレベルの労働者の64%、そして組み立てライン労働者の47%が、その時に何か別のことをしていたいと感じていたという。仕事とフローに関するこの逆説的な結果を受けて、「ワークパラドックス」という言葉が生まれた。

果たして彼らは本当にフローを体験していたのか?この論文を読んだ時、最初に思い浮かんだ疑問だ。何か別のことをしていたかった約半数に上る労働者が、もしフローではなく、ストレスや退屈感を感じていたなら、話はがらりと変わってくる(間違った推測の可能性があるので、分析結果の詳細を見直す必要有り)。フロー体験に必要な状況にながらも、本当にフローと体験する人と、そうでない人と分別をする必要性があるのではないだろうか?その鍵となるであろう要因の1つとして「性格」を見てみようというのが、私の現在の研究テーマとなっている。個人の性格や資質によって、目の前のタスクにどこまで関心を持ち、積極的に関わろうとしているか、といった点が影響されてくるであろう。Csikzentmihalyi博士もこの点を指摘し、著書等で紹介しているが、フロー状態を体験しやすい人の特徴として、オートテリック(自己目的的)な性格(Autotelic Personality)というコンセプトがある。(これについても改めて紹介させていただきたい。)今後読み進める論文や、自身の研究の中で様々分かってきたら、随時紹介していきたい。

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    • ごとうp
    • 2011年 2月 4日

    性格を見るか、状況を見るかで、Personality psychかSocial psychかが分かれてくるところかと思うのですが、性格が原因だとしたらその人はどうしたってフローを体験できないのでしょうか?

    • 質問の直接的な答えとしては、あくまで体験しにくい、しやすいを分ける目安としての性格要素なので、ノーってことになるね。あと、ハイ・コンテクスト、ロー・コンテクストの違いで、1つの性格をとっても幅というかあそびのようなものによってあわられ方が変わってくるだろうから、性格と状況、相互関係にあるのでは、と思うよ。

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