「元気づけ」のアウトソーシング:いかに「意味」をもって仕事のモチベーションを上げるか?

先週、現プログラムの博士課程1年目を無事終えた。試験2つとペーパーが全て同日にあったのでなかなか体にこたえたが、終了後は解放感に満たされて特に何もすることなく過ごした。それもつかの間、今週から夏の授業が始まるので、改めて体をアカデミックモードに慣らし始めねばと思い、このエントリーを書くことにした。今回紹介したいのは、約一ヶ月前にツイートしたウォートンスクールのアダム・グラント教授の講演内容である。

彼の研究分野は、個人的にも重なる部分が多く、かつてはプロフェッショナルマジシャンとして活躍されていたみたいなので妙に親近感がわく。今所属するプログラムで来学期に彼を招待するような話が出ていたので、実現を心から望みたい。さて、講演内容だが、従業員の感じる仕事をする上での「意味」が、いかに彼らにそして組織全体に影響をもたらすことをうまく説明してくれている。以下、グラント教授の話をまとめたものである。元のビデオには字幕はないが、参考のために付け加えておいた。

続きを読む

広告

チクセントミハイ博士から日本へのメッセージ:”Welcome to the New Japan” 

3月11日の東北大震災から早くも2ヶ月が経とうとしています。被害にあわれた方々に心からお見舞いを申し上げます。また、被災地の早期の復興を日々お祈り致します。被災地の惨状を思うと、胸の詰まる思いと同時に、海を挟んだ場所にいる自分の無力感で一杯になります。そんな気持ちと多忙さから、しばらくブログをアップデートできずにいましたが、改めてきちんと再開しようと思いますのでよろしくお願いします。

先月下旬にチクセントミハイ博士のオフィスで研究について語っていた時のことであった。その時に日本ポジティブ心理学協会より日本へのメッセージを依頼されていた話をしてくださった。内容が気になっていたが、同協会ホームページに掲載されていたので紹介したい。以下の内容は一般社団法人日本ポジティブ心理学協会(JPPA)ホームページより転載したものである。 続きを読む

実践知(Practical Wisdom)とは?:アリストテレスがポジティブ心理学に出会う

先日のエントリーで紹介させていただいた実践知(Practical Wisdom)というコンセプトを紹介させていただいたが、今回さらに詳しく踏み込んでいきたい。コンセプトそのものは、アリストテレスの提唱したフロネシス(Phronesis)という概念にさかのぼり(つまり、真新しい考えではないということ)、賢慮(Prudence)、実践的推論(Practical Reason)、実践的知恵(Practical Wisdom)を意味する言葉である。アリストテレスの概念にはここではあまり深入りしないが、より良い生活を送るためには、様々な美徳を場面や状況のニーズに応じてうまく活用、そして調和していくべきである、というのが彼の考え方である。そして、それらの美徳を統合する「マスター美徳」としてフロネシス(実践知)を提唱している。 続きを読む

『予想通りに不合理』の著者ダン・アリエリー教授に会う

昨日、行動経済学者ダン・アリエリー(Dan Ariely)教授のレクチャーに参加する機会があった。彼は認知心理学と経営学の博士号を取得されている。内容的には2009年の彼のTEDでの話(動画参照)と重なる部分もあったので、どんな話を聞いてきたかはそれをご参照いただきたい。興味深かった内容は、「アリエリー教授の講義録」として数点ではあるがツイートさせていただいた。過去に、『予想通りに不合理(原題:Predictably Irrational)』という彼の著書を興味深く読ませていただいた。そして昨年には『不合理だからすべてがうまくいく(原題:The Upside of Irrationality)』という新著が出されている。まだチェックできていないので機会を見つけて読みたい。 続きを読む

「強み」を活用する際に覚えておきたい3つのポイント

臨床心理学や精神医学を学ぶ上で欠かせないのが、『精神障害の診断と統計の手引き(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, DMS)』。その対極に位置づけようとしてクリストファー・ピーターソン博士とマーティン・セリグマン博士によって書かれたのが、強みと美徳をまとめた分類ハンドブック『Character Strengths and Virtues: A Handbook and Classification』である。調べたところ、まだ日本語訳はないみたいだ。ポジティブ心理学では、6つの「美徳」と、その中に分類される24もの「強み」が扱われており、例えば、節度という美徳の中には、自制心、慎重さ・思慮深さ、謙虚さ、といった強みがある。そして、個人の強みを見つけるためにこのハンドブックをもとに作られたVIAという尺度がある(リンク参照)。一般的には、『さぁ、才能(じぶん)に目覚めよう』にて紹介されているストレングス・ファインダーを利用し、ご自身の5つの強みを見出された方の方が多いだろう。この二つの尺度の違いについては今回は省かせていただくが、今回、見出した強みを活用する際に考慮すべき3つのポイント―関連性、葛藤、具体性―を紹介したい。 続きを読む

リーダーシップの授業:分野を越えた議論の面白さ

今学期受講しているクラスの1つにリーダーシップがある。心理学の科目としてオファーされているが、同時にT(Transdisciplinary)コースとも呼ばれ、様々な分野からの知見をベースに特定のトピックに対し、包括的にアプローチするスタイルとなっている(学際研究とも呼ばれている)。受講している学生も心理学のみならず、宗教学、教育学、哲学、情報システムを学ぶ学生が集まっており、毎回の議論も面白さが増す。また、Tコースという点に限らないが、アカデミックな場に長い間いた学生の意見と、現場で様々な経験をしてきた学生の意見とがブレンドする場として、知的刺激に満ちたものにもなっている。この授業の特徴を振り返っていたら、私のかつてのアドバイザーであった教授が、小さなリベラルアーツカレッジに移動した際に直面したある大変さを語っていたのを思い出した。 続きを読む

ワークパラドックス:労働者におけるフロー体験の研究から分かったこと

過去のエントリーでも紹介したが、フロー理論の中では、フローを体験するためには、個人のスキルレベルに合ったチャレンジレベルが必要となる。それでは、仕事の場面において、フロー体験に必要なスキルレベル・チャレンジレベルがそろっていれば、必ずフロー体験そのものにつながるのだろうか?ひょっとするとそうではないのかも知れない、というのが今回の話である。

1989年、『Journal of Personality and Social Psychology』の中で紹介されたCsikzentmihalyi博士、LeFevre博士両者の研究は、78人の労働者を対象にExperience Sampling Method (ESM:経験サンリング法)という方法を使って1週間参加者を追い、彼らの仕事中やレジャー中の心理的経験(フロー、不安、退屈など)について調べたものだ。 続きを読む